石澤敦のメディカルインフォ

レビー小体型認知症(Dementia with Lewy Bodies:DLB)(2)

『運動緩慢』の問診の要点:

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PDとDLBの共通症状:

DLB、PDDの画像診断:


※パーキンソニズムが唯一の中核的臨床特徴であった場合:
*DATイメージングで異常あり、進行性核上性麻痺などのパーキンソニズムを呈する他の疾患と鑑別できれば、probable DLB と診断できる。
この鑑別には、MIBG心筋シンチグラフィーが有用である。

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DATスキャンイメージングの概要:

※PD類似疾患とDATスキャン:

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MIBG(Meta-iodobenzylguanidine)心筋シンチグラフィーの概要:

・Lewy小体病(Lewy Body Disease : LBD)の鑑別診断、すなわち、Lewy小体が発現する病態を有する疾患の鑑別に有用な検査である。節後性交感神経である心臓交感神経障害を判別するものである。
・LBDは、PD(Parkinsons disease): 主に中脳にLevy小体発現
 DLB(dementia with Lewy bodies):主に大脳皮質にLewy小体発現
 純粋自律神経不全症(pure autonomic failure : PAF)を包含する。
LBDでは、発現早期から、あるいは発症前から、心臓交感神経にαシヌクレインが沈着し、
 ⇒心臓交感神経の変性と脱落が起こるために
 ⇒心筋でのMIBG集積低下を生じる。
・LBDにおける典型的な集積低下パターンは、
 MIBG早期像(early image)よりも、後期像(delayed image)の数値が低下Wash out 率が亢進する点にあり、MIBGの心筋における retention の低下を意味する。
・MIBGは、交感神経終末でノルアドレナリンと同様の摂取・貯蔵・放出が行われる物質で、心臓におけるこの物質の動態を見ることで、心筋の心臓交感神経障害を判断できる。

検査の評価

(1)MIBG靜注後、15~30分後(早期像)、3~4時間後(後期像)をγカメラで撮像する。
(2)正面像で、心臓(H)と上縦隔(M)に設定された関心領域(regional of interest:ROII)内のMIBG集積をカウントする。
*SNRI、三環系・四環系抗うつ薬、カルシウム拮抗薬、交感神経作用薬は中止して検査を行う。

(3)計算式:
 H/M比(heart mean/mediastinum mean ratio):
 WR(wash out rate):( Early H ― Delayed H)÷ Early H × 100 (%)

レビー小体型認知症の治療:

・レビー小体型認知症の認知機能障害に対して有効な薬物は、現時点で確たるものは存在しない。
・ドネペジル、リバスチグミンに関しては、一応、その改善効果が示され、「認知症疾患治療ガイドライン2010」では、『使用を考慮しても良い(グレードB)』となっている。
・ドネペジルに関しては、「レビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制」の効能・効果で、2014年9月に保険適応となった。
・米国においては、ドネペジル、リバスチグミンともに、保険適応とはなっていない。

ドネペジル(アリセプト)の使い方:
随伴症状の治療:

運動症状・易転倒(パーキンソニズム):
※薬物治療:L-dopa製剤と L-dopa 賦活剤(ゾニサミド:25mg)

② 非運動症状・低血圧:起立性低血圧、食事性低血圧
※薬物療法(交感神経刺激薬):
・ミドドリン(メトシリジン):2mg×2(4mg×2まで増量可)
・ドロキシドパ(ドプス):初回1日1回100mg⇒隔日100mg増量⇒標準200mg×3
・アメジニウム(リズミック):10mg×2

③ 下部尿路機能障害:蓄尿障害、尿失禁91%
※蓄尿障害(膀胱選択性の高い抗コリン薬;過活動膀胱治療薬):
・トルテロジン(デトルシトール):1日1回4mg
・イミダフェナシン(ウリトス、ステーブラ):0.1mg×2(⇒0.2mg×2)
・ソリフェナシン(ベシケア):1日1回5mg(⇒10mg)
※排尿障害(α1受容体遮断薬:前立腺肥大症に伴う排尿障害):
・タムスロシン(ハルナールD):1日1回0.1mg⇒0.2mg
・ナフトピジル(フリバス):1日1回25mg
 ⇒1〜2週開けて、50〜75mgまで漸増
※いずれも、起立性低血圧の増悪、めまい、立ちくらみの悪化に注意

その他(DLB以外)のパーキンソニズムを伴う認知症:

・進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy:PSP)
・大脳皮質基底核変性症(corticobasal degeneration:CBD)
・嗜銀顆粒性認知症(argyrophilic grain dementia:AGD)


レビー小体型認知症、血管性認知症、正常圧水頭症は、パーキンソン症候群を伴う疾患であるが、これら以外に、 タウ蛋白異常蓄積を有するタウオパチーと称される疾患がある。

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