石澤敦のメディカルインフォ

レビー小体型認知症(Dementia with Lewy Bodies:DLB)(1)

まず、“レビー小体”、“レビー小体病” とは?

(1)レビー小体:

・脊椎動物はα-シヌクレイン(α-Synuclein:α-Syn)という蛋白質を有しており、特に、嗅球、前頭葉、線条体、海馬などにおけるドパミン作動ニューロンのシナプス前の神経端末に存在する。
・α-Synの存在意義については必ずしも明らかになっていないが、シナプス機能の調節や可塑性に関与していると考えられている。
・α-Synの凝集には、何らかの理由、たとえば、神経細胞膜の機能的な不安定さ、α-Syn 関連遺伝子の変異、酸化物質によるストレス、異常リン酸化、カルシウムなど金属イオンの濃度変化などの他因子が複合的に関わっていると考えられている。
α-synuclein蛋白質が異常に凝集・蓄積した細胞をレビー小体と称する。

(2)レビー小体病:

・ 体内にα-Synが蓄積する一連の疾患を、包括的に意味する名称。
 (シヌクレイノパチー:synucleinopathies αシヌクレイン病とも称される)
・LB病変は中枢神経系のみならず、嗅神経、自律神経系、消化器、心筋、皮膚などの全身の組織に蓄積し得る病態である。
・LB病変がどの臓器に蓄積するかによって臨床病型の違いが生じる。
・LB病変によって発症する神経変性疾患には、
 ①パーキンソン病(Parkinson`s disease:PD)
 ②レビー小体型認知症(DLB)
 ③多系統萎縮症 ・・・等がある。

 (参照 かかりつけ医のための「攻める」認知症診療ガイド:医事新報社 )

(3)レビー小体病の総括的事項:

レビー小体型認知症の診断基準:(ガイドライン改定:2017)

追補1

中核的臨床症状に新たに加わった症状:

RBD(REM sleep Behavior Disorder:レム睡眠行動異常)
REM睡眠時、脳は覚醒時に近い活動、骨格筋は緊張が低下
通常の状態では、夢で見たことを行動に移すことはないが、レム睡眠行動障害は何らかの原因で筋緊張の抑制が障害され、夢で見たことをそのまま行動に移してしまう
※海馬を中心としたαシヌクレイノパチーが多い。

※REM sleep( Rapid Eye Movement sleep ;急速眼球運動を伴う睡眠)とは:

身体は骨格筋が弛緩して休息状態、一方、脳は活動して覚醒状態にある。
・レム睡眠時には、視床での情報伝達が遮断され、脊髄のレベルで筋肉への情報伝達が遮断され、運動機能が制止されている。ただし、眼球だけは急速に運動している。
・大脳皮質は覚醒時よりもむしろ強く活動しており、運動機能を遮断しておかないと、身体が寝ながらにして激しく動いてしまうことになる。
・レム睡眠時には脳の強い活動として夢を見る。外見的には寝ているのに、脳は覚醒状態にある(逆説睡眠)。

RBDの確定診断:

睡眠ポリグラフィーによる、筋活動低下を伴わないREM睡眠の確認。

追補2

DLB、PDDの臨床症状の特徴:

特に、“アルツハイマー型認知症との違い”を意識して

レビー小体型認知症の問診のポイント(まとめると):

追補3

DLBの運動症状とは:

・PDでは、必須
・DLBでは、合併することもある運動症状
 ⇒パーキンソニズム(parkinsonism)と称する。
・PDでは、症状の左右差があるが、
 DLBでは、左右差が目立たず、振戦が少ない傾向。

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