石澤敦のメディカルインフォ

認知症に気づく”問診上のポイント

日常的な生活の中で、“病的な物忘れ”すなわち「認知症」を疑ういくつかの特徴的な症状があれば、速やかに“もの忘れ外来”などを受診することが重要です。
山口晴康先生(群馬大学名誉教授)等によって開発された、患者さん家族(または介護者)が判断し記入する問診表は、その目的にかなったツールとして利用価値が大きいと考えられます。
認知症には最も頻度の高いアルツハイマー型認知症はじめ、レビー小体型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症、正常圧水頭症など様々な病型(病態)があります(「メディカルインフォ:認知症」に詳細に記載してありますのでご参照下さい)。
そして、それらの病態には各々特徴的な臨床症状があり、これ等を把握することでおおまかな病型を絞り込むことが出来ます。
まず、認知症初期症状11質問票(SED-11Q)で少しでも“もの忘れ”が疑われたならば、次に、認知症タイプ分類質問票43項目版(DDQ43)の問診表に進んでください。
少しでも当てはまる項目があれば速やかに受診することをお勧めします。

 ※認知症初期症状11項目質問票(SED-11)
  Symptoms of Early Dementia-11 Questionnaire
 ※認知症タイプ分類質問票43項目版(DDQ43)
  Dementia Differentiation Questionnaire-43 items

(参照:実践!認知症診療のコツ-Vol.3 認知症の各タイプの鑑別:2023/08/08 山口晴保)

Step 1:最初の気づき

(認知症初期症状11項目質問票)



下記の症状がある場合は、上記点数にかかわらず受診すべきである

Step 2:どんなタイプの認知症?

略語の解説
日々の生活の様子から、当てはまるものに〇をつけてください。

■認知症タイプ分類質問票43項目版(DDQ43):[山口晴康ら]
>> PDFファイルをダウンロード

bvFTD:行動異常型前頭側頭型認知症
Fr-ADD:前頭葉症状の強いアルツハイマー型認知症

1. 認知症でないカテゴリー

※急激な進行は、慢性硬膜下血腫、脳梗塞、悪性腫瘍などを除外する。

2. アルツハイマー型認知症カテゴリー

※これらの項目にたくさんチェックがつき、他のカテゴリー項目にほとんどチェックがつかなければ、典型的なアルツハイマー型認知症の可能性が高い。

3. レビー小体型認知症カテゴリー

※レビー小体型認知症の臨床的特徴である、①症状の変動、②リアルな幻視、③REM睡眠行動異常、④自律神経症状、⑤パーキンソニズムを含む項目。
※12~21項目(10項目)中、4項目を陽性とした時、感度:82.6%、特異度:77.7%で判別に有用。

4. 血管性認知症カテゴリー

※動作や発語の緩慢さ、反応の鈍さを特徴とする。
※臨床症状の原因となり得る、脳画像上の病変を有すること。

5. 前頭側頭型認知症カテゴリー

※前頭前野障害の特徴(易怒性や脱抑制)をチェックする項目。
行動障害型前頭側頭型認知症(bvFTD):前頭葉萎縮が中心の前頭側頭型認知症
・怒りっぽい(前頭葉症状を伴う)アルツハイマー型認知症(Fr-ADD)
・怒りっぽいレビー小体型認知症
嗜銀顆粒性認知症
などの鑑別が必要となる。

6. 正常圧水頭症カテゴリー

※正常圧水頭症の3主徴のチェック項目。
① 尿失禁:多くの場合、初期には認めず
② 認知障害:ボーっとする、反応が鈍くなるといったタイプの認知機能低下
③ 歩行障害:足を左右に広げたまま、摺り足で歩く
※これらの項目に当てはまる場合は、画像診断(DESH signの有無)を行う必要あり。

7. 言語障害カテゴリー

※この項目にチェックが付いたら、
① 物品呼称が困難になる意味性認知症(語義失語:左優位の側頭葉萎縮が主体)
② ロゴペニック型のアルツハイマー型認知症
などの鑑別が必要となる(専門医への紹介)。
※言語障害があると、MMSEやHDR-Rの点数が低くなることに注意。

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