石澤敦のメディカルインフォ

脂肪肝の臨床(肥満症、もう一つの側面)

肝臓の重要な働きの一つがエネルギー代謝であり、摂取したエネルギーは消費エネルギーとして利用されるが、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ると余分なエネルギーはグリコーゲンや中性脂肪に作り替えられ、腸間膜(内臓脂肪)、皮下脂肪組織、肝臓に蓄えられる。
特に肝臓においては、組織学的に肝細胞の30%以上(現在は、5%以上)に脂肪が溜まる状態を脂肪肝と言い、このような病態を基盤として発症する様々な肝疾患が問題となっている。
1960年以前は脂肪肝と言えば過度の飲酒によるアルコール性肝障害(アルコール性肝炎)が中心であった。



近年、車社会や他の交通手段の利便性の格段の進歩による運動量の低下や、脂質過剰摂取の欧米型食生活の定着に基ずく「肥満」の増加が久しく問題とされてきた。 肝臓においては、「肥満」を基調とした非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:nonalcoholic fatty liver disease)が急速に増加しており、これを放置すれば、さらに非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:nonalcoholic steatohepatitis)へと移行し、炎症による肝細胞の破壊の結果、肝線維化⇒肝硬変⇒肝癌という最終病態を迎えることが懸念される。これらは、従来のアルコール性肝障害やウィル性肝炎に取って代わる重大な肝疾患の局面である。
大部分のNAFLDは、肥満、糖尿病、高インスリン血症、脂質異常症を伴っており、心血管イベントの重大な危険因子でもある。NAFLD肝臓における“メタボリックシンドローム”の表現型とも言える。
本邦では、NAFLDは約2000万人超、その1~2割の約400万人近くがNASHと考えられ、その有病率はさらに上昇している。
検診や人間ドッグなどで、「肥満」や、「メタボリックシンドローム」などの指摘を受け生活習慣改善や減量を指示されているにも関わらず、「肥満」自体には何ら自覚症状を伴わないことから、多くのケースでこれらの病態は放置されているのが現状である。
肥満」の指摘を受けた場合は、「肥満症」とされる11の健康被害の有無や、血液データーの“脂肪肝を示唆する” 所見を読み解き、「肥満」を放置することなくその病態と真摯に向き合うことが求められる。

NAFLDの概念・定義

(NAFLD/NASH診療ガイドライン2022)

NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)と各種代謝疾患の合併

NAFLDは、肥満をベースとした生活習慣病(特に脂質異常症)と深い関連を有し、メタボリックシンドロームの肝臓での表現型とも言える。
肝生検でNAFLDと診断された疾患患者が、各代謝疾患を合併していた頻度が報告されている。
(Nakahara.T 等 J.Gastroentero 49:2014:横浜市立大学肝胆膵消化器病学)

一般臨床における“脂肪肝”の見つけ方

身体測定、血液検査等において、肥満「BMI:25以上」「メタボリックシンドローム」の状態が確認されたケースにおいては、さらに、下記の所見を確認する。

脂肪肝の分類

(補足、参考)アルコール性肝炎 について

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