健康コラム

生活習慣病について

生活習慣病を知って毎日の生活を過ごしましょう

1. 生活習慣病ってどんな病気?

 以前、成人病と呼ばれていた糖尿病、高血圧、高脂血症などの疾患を、現在は生活習慣病と呼んでいます。これらの疾患は様々な生活習慣の乱れが原因で起こり、放置すれば、脳卒中や心筋梗塞など重大な病気の発症につながることが知られています。そして、生活習慣を改善することで、これらの病気の進展を抑制し予防できると考えられることから、生活習慣病という名前が付けられました。
 すでに報道などでもご承知のことと思いますが、厚生労働省は、脳卒中や心筋梗塞などの重大な疾病を予防することで医療費の大幅な削減が見込まれるとの理由から、これら生活習慣病を早い段階から治療・管理することに力を入れ始めています。
 あなたも、ご自身の生活習慣について、もう一度しっかりと見つめなおしていただきたいと思います。

2. 生活習慣病はなぜ起こるの?

 私たちの生活パターンは、特に終戦を境に大きく変化しました。動物性脂肪の多い高カロリーの欧米型食生活、車や公共の交通手段の発達、エレベーターやエスカレーターの利用等など、私達は豊かで便利なこれらの生活を積極的に受け入れてきました。その結果、食生活の欧米化と運動不足があいまって肥満が助長される一方、中高年に到ると、組織社会でのストレスや、喫煙、過度の飲酒など生活習慣の乱れが加わり、生活習慣病は発症するのです。
 これら生活習慣を根本的に見直すことなしに生活習慣病を克服することは難しい状況です。

3. 生活習慣病はなぜいけないの?

 “糖尿病の気がありますね”、“血圧が高目ですよ”、“コレステロールと中性脂肪が高いですね”等の指摘を受けた方もたくさんいらっしゃると思います。でも、そのような指摘を受ける前に、どこかが痛かったり、苦しかったり、何か自覚症状はありましたか?
 恐らく、どなたも自覚症状を感じることはなかったと思います。このことが、生活習慣病が『静かなる殺人者―サイレントキラー;silent killer』と呼ばれる所以なのです。生活習慣病を放置することによりいつの間にか動脈硬化が進行し、結果として、脳卒中(脳梗塞や脳内出血)や心筋梗塞発症の原因となることは多くの研究で明らかとなっています。なかでも、糖尿病の場合は、糖尿病網膜症による失明、糖尿病性腎症による腎不全、末梢神経障害等など、さらに多くの合併症を発症します。
 脳卒中や心筋梗塞などが発症した時点では、ほとんどの場合、生活習慣病自体も重大な局面に進展している可能性が大きいのです。脳外科医の立場から言えば、脳卒中で倒れた患者さんのほとんどは、生活習慣病のコントロールが充分になされていませんでした。これら生活習慣病の進行を川の流れにたとえると、脳卒中発症はもはや、その川の流れの最下流にあると言えるでしょう。つまり、『脳卒中は、生活習慣病放置のなれの果て』とも言えるのです。

4. 生活習慣病と診断されたら?

 もし生活習慣病とわかったら、いつまでも様子を見て放置しないことが最も重要です。
 せっかく健康診断や人間ドッグで生活習慣病と診断されながら、症状がないために何年も放置している方が意外と多いのではないでしょうか。そしてまた、病院に定期的に通院し投薬を受けていながら、データ-が正常化していない方を多く見かけます。“病院に通い、お薬を飲んでいる”こと、すなわち“治療に成功している”ことではありません。一月に1、2回の検査で生活習慣病をコントロールすることは、実はとても難しいことなのです。医者任せ、人任せにせず、治療にご自身が参加し、ご自分の力で病気をコントロールするという考え方が必要なのです。“日々の生活習慣の改善”という『治療』は、医師はもちろん、あなたご自身以外の他の誰にも出来ないことなのですから。
 重大な半身麻痺、意思の疎通が出来ない失語症・・・一瞬にしてその人の人生を台なしにしてしまう脳梗塞や脳内出血は、起こってしまってからでは手遅れなのです。どんな先進医療、どんな名医をしても、失われた神経の機能を元に戻すことなど出来ないのです。生活習慣病が加速度的に増加し続ける一方、脳卒中の多くが生活習慣病と関連があり、脳卒中を発症した人のほとんどがこれら生活習慣病の管理と治療が不充分でした。
 “生活習慣病とわかった”その時は、まだまだ手遅れではありません。将来起こり得る脳卒中を予防するための、今がまさにスタートラインであると考えて下さい。健康で充実した、そして自立した“老後”を送るためにも、一日も早い生活習慣病の克服を目指していただきたいと思います。
 これが『なれの果て』を見続けてきた脳神経外科医からのメッセージです。

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