石澤敦のメディカルインフォ

頭部外傷

頭部外傷とは

頭部に外力が加わることによって、①頭皮 ②頭蓋骨 ③脳実質に、様々な形で損傷が発生する状態。



頭部に外力が加わると、まず頭髪や頭皮が外力に対し一定程度の緩衝効果を発揮するが、この時、局所には皮膚損傷(挫創や切創)や皮下血種(皮膚の直下、頭蓋骨の外)が発生し得る。
外力が頭蓋骨に波及すると、その弾力性により外力が加わった方向と直角の方向に頭蓋骨が伸展するが、その弾性の限界を越えて伸展されると骨折が発生する。
比較的広い範囲で“たわみ”が起これば線状骨折となるが、局所的に硬い物体が衝突すれば陥没骨折を引き起こす。
頭蓋骨は柔らかな“豆腐状”の脳を取り囲み、脳自体を外力から守っているが、外力の衝撃が大きければ、頭蓋内組織にも損傷が波及することになる。
頭蓋骨という硬い“箱”に収められた脳は、衝突などにより大きな衝撃を受けたとき、慣性によって頭蓋骨とは別の動きを呈し、その結果、頭蓋内で様々な病態が発生する。

頭部打撲で起こる様々な病態

頭部外傷問診上の留意点

頭部を打撲した患者さんを診る上で重要なことは、まずその外傷機転を知ることである。
それにより、現在起こっている病態や今後起こり得る病態を、より正確に把握することが可能となる。よって、患者さん自身、付き添いの方、目撃者からの情報は極めて重要である。

頭部外傷の発生機序

外傷機転(①、②)の場合
外傷機転 ③の場合
① 直撃損傷(coup injury)

高所からの転落、階段からの落下、歩行中や自転車走行中の転倒時など、頭部に強い打撃や衝撃が加わると、打撃部位直下の頭蓋骨骨折や局所の頭蓋内出血、脳挫傷が起こり得る(図1)。


② 対側損傷(contrecoup injury)

また同時に、頭蓋骨内の“柔らかな”脳は慣性による複雑な動きにより、打撃部位とは離れた他の部位(多くは対側)に脳損傷が発生することがある(図2)。

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